第3回高校教員のための「道徳教育講座」を開催
8月25日(火)に第3回高校教員のための「道徳教育講座」を開催いたしました。今年で3回目の開催となったこの講座は、千葉県立高等学校における 「道徳の時間」の必修化に伴い、平成25年から高校教員を対象として、「道徳とは何か」「どのように教えたら良いのか」という疑問にお応えするために開催 してきた講座です。千葉県教育委員会のご後援に加え、今年は茨城県教育委員会にもご後援とご協力をいただきました。
講座は、本学学長及び道徳科学教育センター長の中山 理が主催者挨拶を行い、引き続き、本学経済学部の江島顕一助教より「よりよい道徳教育を目指して」と 題して、「道徳の時間」と教科「道徳科」との異同、学習指導要領の改正点の解説の後、道徳授業で大切な「価値観」「生徒観」「資料観」、自らの授業実践に 基づく「高等学校の道徳授業への提案」、道徳教育に大切な「教科観」「教師観」「道徳教育観」などについて講義が行われました。そして、道徳教育には「知 徳一体の考えに基づく道徳教育観」を持つことが大切であり、道徳教育および道徳科の成功の前提は「教師と生徒との信頼関係と生徒相互の好ましい人間関係」 と「校内環境」が必要であると結びました。
次に千葉県の道徳教育について、千葉県教育庁の西周信幸指導主事ならびに千葉県立松戸高等学校の道徳教育推進教師である足達正明教諭より講義が行われました。
西周信幸指導主事は、「千葉県における道徳教育の現状と課題」と題して、高等学校における道徳教育は「人間としての在り方生き方に関する教育を学校の教 育活動全体を通じて行うことである」と道徳教育の目標、千葉県の道徳教育への取組について解説、読み物教材、映像教材の紹介および道徳の授業の実施方法等 について解説を行いました。足達正明教諭は、「千葉県における道徳教育の事例報告」と題して、道徳教育推進指定校として行ってきた取り組みを紹介し、その 成果と課題について報告と解説を行いました。
そして、課題の解決に向けては、教師自身の実感・感動経験が必要であり、相互の授業参観や討議による道徳授業 のスキルの向上、教師間の連携、生徒たちが中学校までに受けてきた道徳授業の内容・形態を知ることが必要であると結びました。
次に高等学校における道徳教育の先進県である茨城県の道徳教育について、茨城県教育庁の渡邉英一指導主事より「茨城県における道徳教育の現状と課題」と題し て、茨城県の高等学校に道徳教育を導入した経緯とその後の取り組み、教材の作成、指導者の育成、公開授業の実施、道徳教育推進委員会の設置等について具体 的な報告と解説が行われました。さらに、平成28年度より実施する県立高校2年生対象の道徳の授業「道徳プラス」の準備状況、取り組み内容について紹介が 行われました。
最後に東京情報大学総合情報学部の原田恵理子准教授より「心理教育的アプローチを活かしたモラル教育」と題して、学生・生徒の間で起きているスマホ・携帯電 話等によるインターネット上の問題行動やいじめの実態などについて解説があり、心理教育的アプローチによる情報モラル教育の必要性について講義が行われま した。講義では、発達段階における指導方法の相違やネットワーク上と社会生活上のコミュニケーションの特性について理解し、相手の立場に立ち、思いやりの ある行動がネットワーク上でも必要であり、日常的な行動として指導・教育を行って身につけさせることが大事であるとして、道徳教育の必要性について解説を されました。
受講者からは「道徳の教科化の基本的知識がよく分かった」「教員と生徒との信頼関係が必要であること」「適切な教材、指導法 とは何か。経験を積むこと、試行錯誤が大切である」「学校として道徳をどう取り組むかの大変さがよく分かった」「本当に心に届くか、心から考えさせること ができたか、検証するのは困難」「毎日の暮らしの中で子どもたちに教えたいこと、伝えたいことを常に意識しているという積極姿勢はぜひ取り入れたい」「情 報モラルの教育は、現代を生きる子どもにとって重要である、相手を思いやる気持ち(社会性)を育てて生きたい」など多数のご意見をいただくことができまし た。また、「「道徳なんて」と思っている教員が多すぎる」「評価方法がはっきりしない」など課題等もいただきました。
「道徳教育の本質と実践 ~高等学校における道徳教育~」と題して行われた今回の講座は、4時間30分ほどの時間でしたが、受講者はそれぞれに熱心に聴講や質疑を行ない、満足した雰囲気の中で閉会しました。
麗澤大学道徳科学教育センターでは、今後も皆様の道徳教育への取り組みの参考となる講座を開設していきたいと考えておりますので、ご意見等をお寄せいただければ幸甚でございます。
平成27年8月25日
麗澤大学道徳科学教育センター